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女性の更年期

 

2015/06/08

■更年期
 女性の性成熟期から老年期への移行期。月経周期が不規則になる頃から始まり月経停止後数年間に至るまでの期間で、生理的な卵巣機能の衰退期間。個人差はありますが、閉経を挟む前後10年くらいです。

■女性のライフサイクル
 幼年期、少女期、性成熟期、更年期、老年期

■漢方でのライフサイクル
 女性は7の倍数で変わると考えられています。

 7歳:成長期
 14歳:初潮を迎える
 21歳:成熟期
 28歳:体や性の機能ピーク
 35歳:気・血の衰えが始まる
 42歳:体力の衰え、シワや白髪が気になり始める
 49歳:閉経、その後緩やかに老化していく

 多くの女性は平均50歳ごろ、閉経を迎えます。漢方での考え方でも7の倍数である、49歳ごろ閉経を迎えるとして、ほぼ同じです。更年期に入りますと、女性は卵巣の機能が衰え始め、女性ホルモンが急激に低下してきます。これに伴い、のぼせや発汗、イライラなど様々な症状が現れやすくなり、ほとんどの女性がこの時期何かしらの更年期症状を訴えます。その中で日常生活に支障をきたすほどつらいのが更年期障害になります。

 ここでは、症状の重い更年期障害だけではなく、更年期にみられる症状なども幅広く見ていきます。

 

 

更年期の主な症状

 ①顔がほてる
 ②汗をかきやすい
 ③腰や手足が冷えやすい
 ④息切れ、動悸がする
 ⑤寝つきが悪い、または眠りが浅い
 ⑥怒りやすく、すぐイライラする
 ⑦くよくよしたり、憂鬱になることがある
 ⑧頭痛、めまい、吐き気がよくある
 ⑨疲れやすい
 ⑩肩こり、腰痛、手足の痛みがある

 

 

更年期症状の原因

 女性ホルモンの急激な減少が大きな原因です。更年期で一番大きな変化は閉経です。閉経とは月経が1年以上来なくなることと定義されています。卵巣が機能を停止することで閉経になります。卵巣には卵子の排出と女性ホルモンの分泌という二つの大きな働きがあります。通常、まず排卵が無くなり、その後女性ホルモンが分泌されなくなります。また、更年期は子育て終了、親世代の介護、夫の仕事の変化などの環境の変化やストレスが大きな時期でもあります。

 漢方では、こうした更年期の根本原因を五臓六腑の「腎」の衰えと考えます。腎は生命エネルギーの源である「精」を蓄える臓器で、発育や生殖などの機能と深く関わっています。そのため腎の機能が衰えると、ホルモンの失調などが起こりやすくなります。

 また、腎には全身の陰陽をコントロールする働きがあるため、その機能が低下すると陰陽のバランスが崩れてしまいます。①~③の症状は陰陽のバランスが崩れて身体を温めたり熱を冷ましたりの調節が上手くできずに起こる症状です。エンジンがなかなか温まらずエンジンが動きにくい、反対に動くとすぐにオーバーヒートして止まってしまうオンボロ車のようですね。

 五臓六腑の「肝」や「心」にはストレスや精神状態をコントロールする働きがあり、これらの臓腑が失調すると④~⑧のような症状が起きやすくなります。⑨や⑩の肉体疲労、精神疲労、血行不良などの症状は更年期以外でもよくある症状ですね。

 

 

更年期の対処法

 西洋医学では、運動、栄養、休養などの養生やホルモン補充療法、向精神薬などが用いられます。

 

「腎」の不調

 

・腎陽虚(陽気不足):疲労、倦怠感、息切れ、腰痛、腰や四肢の冷え、頻尿、不眠
・腎陰虚(水分不足):ほてり、寝汗、めまい、耳鳴り、乾燥による皮膚のかゆみ、腰痛、足腰が弱い、便秘気味

 身体に潤いを与え、体内の余分な熱を冷ます「水分や血液(陰液)」、身体を温め、成長を促す「陽気(エネルギー)」。こうした体内すべての陰液や陽気は、「腎」に蓄えられる生命エネルギーの源「精」を基本として生み出されます。そのため、腎の機能が衰えて精が不足すると、水分や血液、陽気なども不足し、陰陽のバランスが崩れて様々な不調が表れます。

 陰陽どちらが不足しているかはで症状は変わりますが、「冷えのぼせ」のように陰陽両方が不足していることもあります。いずれにしても、養生の基本は腎の機能を高めることが大切です。

■おすすめ食材
 松の実、ごま、豆腐、クルミ、山芋、あわび、シジミ、きのこ類など

■よく使われる漢方薬
 八味地黄丸、参馬補腎丸、杞菊地黄丸、瀉火補腎丸など

 

 

「心」の不調

■主な症状
 動悸、不眠、不安、集中できない、健忘

 「心」と「腎」は「火と水の関係」のように互いに協調して、バランスをとりながら活動しています。更年期になって腎の機能が低下すると、心の陽気を上手く調節することができなくなり、熱がこもった状態になります。その結果、精神状態をコントロールする心の機能が低下して、動悸や不眠といった症状が現れます。

■おすすめ食材
 ナツメ、小麦、ユリの根、苦瓜、ブドウ、ワイン、竜眼肉、緑茶など

■よく使われる漢方薬
 酸棗仁湯、天王補心丹、麦味参顆粒、婦宝当帰膠、心脾顆粒、甘麦大棗湯など

 

 

「肝」の不調

■主な症状
 憂うつ感、怒りっぽい、胸やわき腹のはり、重苦しい、偏頭痛、関節痛、耳鳴り、冷えのぼせ

 精を貯蔵する「腎」と血を蓄える「肝」は、[肝腎同源][精血同源]といわれ、お互いに補い合う臓器です。そのため、加齢によって腎の機能が低下すると、肝に蓄える血も減ってしまいます。「陰」の要素である血が不足すると、肝には余分な熱が発生し、些細なことでもイライラしたり怒りっぽくなったりします。

 また、肝には「気」の流れを整えてストレスをコントロールする働きがありますが、強いストレスを受けるとその機能が低下します。気の流れが滞ってストレスを上手く発散できず、さらに血の巡りも悪くなる瘀血が発生して痛みの症状が現れることもあります。

■おすすめ食材
 ジャスミン茶、クコの実、菊花茶、鶏肉、そば、栗、黒きくらげ、ブルーベリー、梅干しなど

■よく使われる漢方薬
 加味逍遥散、逍遥丸、婦宝当帰膠、冠元顆粒など

 

 

 更年期の症状には個人差がかなりありますが心身が疲れていると症状も強く出る傾向にあります。更年期に入る時期は、長年の生活習慣の積み重ねで身体にも心にも疲労がたまっていることが多いものです。

 日本人女性の平均寿命は86歳を超え世界一です。更年期以降も25年以上の人生が待っています。セカンドライフを充実して過ごすためにも、ぜひこの時期を生活習慣見直しのチャンスと捉え、心も身体も元気に整えておきましょう。